ビジネスシーンでは、取引先や顧客への感謝を示す言葉が多く使われます。その中でも「お引き立てにあずかり」は、特に丁寧な敬語表現のひとつです。
しかし、「お引き立て」という言葉は普段の会話ではあまり使われないため、適切な場面や正しい使い方が分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「お引き立てにあずかり」の意味や、適切な使い方、さらには誤った使い方の例まで詳しく解説します。ビジネス文書やメールでの実践的な例文もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この表現を正しく理解し、適切に使いこなすことで、ビジネスコミュニケーションをよりスムーズにし、相手に好印象を与えることができるでしょう。
「お引き立てにあずかり」の意味とは?
まず、「お引き立てにあずかり」という表現の意味を確認してみましょう。
「お引き立て」とは、相手から特別に目をかけてもらったり、ひいきにしてもらったりすることを指します。これは、自分自身や自社の働き、提供するサービスや商品を相手が高く評価し、継続的に支援してくれている場合に使われる言葉です。
特に、ビジネスシーンでは長年にわたってお世話になっている取引先や、引き続き関係を築いていきたい顧客に対して使用することが多く、目上の方や上司、取引先への感謝を伝える際に適した表現となります。
「お引き立て」という言葉自体には、「より良く引き上げる」「奮い立たせる」といった意味があり、単なる取引以上に、相手の厚意や支援が含まれていることを表します。そのため、「お引き立てにあずかり」という表現には、ひいきにしてもらっている事実だけでなく、感謝や敬意を込めたニュアンスが含まれるのです。
「お引き立てにあずかり」の適切な使い方
では、「お引き立てにあずかり」が実際にどのように使われるのかを見ていきましょう。
「お引き立て」は幅広い相手に使える表現
ビジネス敬語の中には、使う相手が限定される言葉もあります。例えば、「ご査収ください」は目上の人には使えないなど、使い分けが必要なケースが多くあります。
しかし、「お引き立て」は、その場面にふさわしい状況であれば、特定の相手に限定されることなく、広く使える表現です。目上の人、取引先、顧客など、さまざまな相手に対して違和感なく使うことができます。
「お引き立て」の使用シーン
この表現は、ビジネス文書の中で頻繁に登場し、特に以下のような場面でよく用いられます。
- 着任・退任・転勤・赴任の挨拶
- 取引先への感謝の表現
- お詫び状などのフォーマルな文書
ビジネス文書の冒頭での使用例
ビジネス文書の冒頭では、「いつもお世話になっております」と同じようなニュアンスで「お引き立てにあずかり」が用いられます。いわば、定型的な挨拶として使われる表現のひとつです。
例えば、以下のような書き出しが一般的です。
拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は格別のお引き立てにあずかり、心より御礼申し上げます。
このような文章は、ビジネスの場で多く使われるため、覚えておくと便利です。
個人向けの手紙との違い
個人間のやり取りでは、「拝啓 お元気ですか」といったカジュアルな書き出しが一般的ですが、「お引き立てにあずかり」は、法人間やフォーマルなやり取りで使われる表現であるため、ビジネス向けの表現として認識しておくとよいでしょう。
「お引き立てにあずかり」の誤った使い方
以下のような表現は、「お引き立てにあずかり」を使う際に避けるべき例です。
- 恐縮ですが、平素は格別のお引き立てをいただき、感謝申し上げます。
- 恐れながら、今後ともお引き立てのほどお願い申し上げます。
- ご承知の通り、いつもお引き立ていただきありがとうございます。
- 丁重にお引き立てにあずかり、心より御礼申し上げます。
- 日頃よりお引き立ていただき、誠に恐れ入ります。
- お忙しいところ、お引き立ていただきありがとうございます。
- ご迷惑をおかけするかもしれませんが、お引き立てのほどお願い申し上げます。
これらの表現は、不適切または不自然な使い方にあたります。「お引き立てにあずかり」は、相手への敬意や感謝を伝えるための言葉ですが、使い方によっては不適切な印象を与えることがあるため注意が必要です。
お詫び状の文末での「お引き立てにあずかり」
「お引き立てにあずかり」は、お詫び状の文末で使われることもあります。特に、取引先や顧客へのお詫びを述べる際に、この表現を適切に用いることで、今後の関係を円滑に保つことができます。
お詫びの際に避けるべき表現
ビジネスシーンでは、お詫びを述べる際に弁解を加えるのは避けるべきです。
例えば、
✖ 「ご迷惑をおかけしましたが、これからも変わらぬご愛顧をお願いいたします。」
✖ 「今回の件は誤解があったかもしれませんが、引き続きご支援をお願いいたします。」
このような表現は、相手に対する謝罪の意図が十分に伝わらない可能性があります。
適切なお詫び状の文末表現
お詫びの際には、以下のような定型文を用いると、誠意が伝わりやすくなります。
「このたびの件につきまして、重ねてお詫び申し上げますとともに、今後とも変わらぬお引き立てにあずかりますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。」
このような表現を覚えておくと、ビジネスシーンで役立つ場面が多いでしょう。
「お引き立てにあずかり」を用いたおすすめの例文30選
「お引き立てにあずかり」を活用した例文を紹介します。ビジネスシーンやフォーマルな場面でのご参考にしてください。
① 感謝を伝える表現
- 「平素は格別のお引き立てにあずかり、誠にありがとうございます。さて、弊社は下記内容にて展示会へ出展いたします。」
- 「本年は格別のお引き立てにあずかり、誠にありがたく厚く御礼申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。」
- 「これも皆様のご支援のおかげと深く感謝しております。今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。」
- 「もとより、これも皆様のご協力の賜物と存じます。引き続き倍旧のお引き立てを賜りますよう、社員一同心からお願い申し上げます。」
- 「平素はひとかたならぬお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。」
② 挨拶状・季節のご挨拶
- 「残暑厳しき折、皆様ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。平素より格別のお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。」
- 「寒さひとしお厳しい毎日、皆様ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素よりお引き立てにあずかり、厚く御礼申し上げます。」
- 「旧年中は格別のお引き立てをいただき、衷心より感謝申し上げます。」
- 「残暑お見舞い申し上げます。平素は格別のお引き立てにあずかり、厚く御礼申し上げます。暑さに負けず、スタッフ一同皆様のご来店をお待ちしております。」
- 「弊社は、来る〇〇年〇月〇日をもって創業○○周年を迎えます。これもひとえに皆様の変わらぬお引き立てのおかげと深く感謝しております。」
③ 役職就任・異動の挨拶
- 「このたび、執行役員に就任いたしました。(中略)今後とも倍旧のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。」
- 「四月より営業部に移り、法人営業を担当することになりました。微力ではありますが、誠心誠意努力いたす所存ですので、何卒変わらぬお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。」
- 「四月より総務課へ異動となりました。今後も精進してまいりますので、変わらぬお引き立てにあずかりますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。」
- 「○○社の社長に就任することとなりました。今後ともお引き立てにあずかりますようお願い申し上げます。」
- 「来年度より理事を務めることとなりました。引き続きお引き立てくださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。」
④ 取引継続のお願い
- 「より良い製品を皆様にご提供できますよう、今後も努力してまいりますので、引き続きお引き立てのほどお願い申し上げます。」
- 「より良いサービスを提供できるよう尽力してまいりますので、これまで同様、お引き立てくださいますようお願いいたします。」
- 「弊社もこの三月で創業○○周年を迎えます。今後とも末永くお引き立てにあずかりますようお願い申し上げます。」
- 「これも皆様のご協力の賜物と深く感謝しております。今後とも変わらぬお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。」
- 「日頃よりお引き立てにあずかるお取引先の皆様へ感謝の意を込めて、ささやかな懇親会を催しますので、ご参加いただければ幸いです。」
⑤ イベント・催し物の案内
- 「日頃よりお引き立てにあずかる皆様をお招きし、恒例のゴルフコンペを開催いたします。」
- 「今後ますますのお引き立てにあずかりたく、ささやかではありますが弊社忘年会へご招待申し上げます。」
- 「今後益々のお引き立てをお願いしたく、ささやかな会を開催いたしますので、ご出席いただけますと幸いです。」
- 「平素より格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。さて、弊社は○○にて開催される展示会へ出展いたします。」
- 「新たなサービスの提供に向け、引き続きお引き立てを賜りたく存じます。詳細につきましては、別途ご案内申し上げます。」
⑥ 企業活動・業務案内
- 「平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。誠に勝手ながら、弊社では下記期間を年末年始休業とさせていただきますので、ご案内申し上げます。」
- 「平素より格別のお引き立てにあずかり、ありがたく厚くお礼申し上げます。誠に勝手ながら、当店では下記期間に営業時間を変更させていただきますので、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。」
- 「平素より格別のお引き立てにあずかり、厚く御礼申し上げます。今後とも変わらぬご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。」
- 「今後とも皆様のお力添えをいただきながら、より一層努力してまいりますので、変わらぬお引き立てのほどお願い申し上げます。」
- 「日頃よりお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。今後もお客様に満足いただけるよう精進してまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。」
「お引き立てにあずかり」という表現は、ビジネスシーンで幅広く活用できる便利な言葉です。特に、感謝の意を伝えたり、取引先との関係を円滑に保つために役立ちます。適切なシーンに応じた表現を選び、ビジネスコミュニケーションを円滑に進めましょう。
「お引き立て」を用いたさまざまな表現
「お引き立てにあずかる」だけでなく、ビジネスシーンではさまざまな言い回しが存在します。ここでは、「お引き立て」を使った別の表現をご紹介します。
① 「お引き立てを賜る」
「賜る」は、「いただく」の謙譲語であり、目上の相手に対して感謝を伝える際に用いられます。
✅ 使用例
- 「日頃より格別なお引き立てを賜り、心より御礼申し上げます。」
(「いつも特別なお力添えをいただき、深く感謝申し上げます。」の意) - 「今後とも倍旧のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。」
(「今後も、以前にも増してご支援いただきますようお願い申し上げます。」の意)
📌 「倍旧」とは、「これまで以上に」の意味を持ち、取引先や顧客との関係をより深めたい際に使われます。
② 「お引き立ていただき」
「お引き立ていただき」は、「ひいきを受けること」に対する感謝を示す表現です。
✅ 使用例
- 「平素より、一方ならぬお引き立ていただき、誠にありがとうございます。」
(「日頃から特別なお力添えをいただき、心より感謝申し上げます。」の意)
このフレーズは、取引先や顧客へ感謝の意を伝える際に適しています。
③ 「お引き立てのほど、よろしく」
取引の継続や関係強化をお願いする際に使われる表現です。
✅ 使用例
- 「これもひとえに皆様のご支援のおかげでございます。今後とも変わらぬお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。」
(「今後も変わらぬご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。」の意)
この表現は、挨拶状やビジネスメールの締めくくりに適しています。
「お引き立て」は、さまざまなシーンで活用できる便利な表現です。
- 「お引き立てを賜る」 → 目上の相手への感謝を伝える際に使用
- 「お引き立ていただき」 → 日頃の支援に感謝を示す際に適用
- 「お引き立てのほど、よろしく」 → 取引や関係維持をお願いする際に活用
適切な表現を使い分けることで、より洗練されたビジネスコミュニケーションが可能になります。
「お引き立て」の類語表現
ビジネスシーンでは、状況に応じて適切な表現を使い分けることが重要です。「お引き立て」に近い意味を持つ類語をいくつか紹介しますので、場面に応じて活用してください。
① ご愛顧(ごあいこ)
「ご愛顧」は、「お引き立て」とほぼ同じ意味で使用される表現です。特に、長期にわたって支援を受けている場合や、取引先や顧客に対する感謝を伝える際によく用いられます。
✅ 使用例
- 「平素より格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。」
- 「これからも変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。」
📌 「お引き立て」と同じくらい頻繁に使われるため、どちらの表現を選んでも自然です。
② ご恩顧(ごおんこ)
「恩顧」とは、「特別な支援や目をかけてもらうこと」を意味します。特に、企業が顧客や取引先から受ける支援や援助に感謝を示す場合に適した表現です。
✅ 使用例
- 「長年にわたるご恩顧に、心より感謝申し上げます。」
- 「これまでのご恩顧に深く感謝し、今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします。」
📌 経営の支援を受けていることを強調したい場合に適しています。
③ ご高配(ごこうはい)
「高配」は、「相手の心配りや厚意を敬意を持って表す語」です。特に、長い付き合いのある取引先や、格上の相手に対して使われることが多い格式のある表現です。
✅ 使用例
- 「平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。」
- 「今後とも一層のご高配を賜りますよう、お願い申し上げます。」
📌 取引先やお得意先に対して、より丁寧な印象を与えたい場合におすすめです。
④ ご贔屓(ごひいき)
「ご贔屓」は、特に商売の場面で使われる言葉で、「長く支援してもらうこと」を意味します。小売店や飲食店など、顧客に対して用いることが多い表現です。
✅ 使用例
- 「日頃よりご贔屓にあずかり、誠にありがとうございます。」
- 「これからも変わらぬご贔屓をお願い申し上げます。」
📌 親しみを込めた表現であり、格式ばったビジネス文書ではあまり使用されません。
まとめ
類語 | 主な意味 | 使用シーン |
---|---|---|
ご愛顧 | 長く利用・支援してもらうこと | 一般的なビジネス表現・顧客向け |
ご恩顧 | 特別に目をかけてもらうこと | 企業や経営に関する感謝を示す際 |
ご高配 | 相手の配慮や厚意を敬う表現 | 目上の相手・長年の取引先への挨拶 |
ご贔屓 | 継続的な支援や愛用を受けること | 小売業・飲食店などカジュアルな商業場面 |
「お引き立て」に限らず、シチュエーションに応じて適切な言葉を選ぶことで、より洗練されたコミュニケーションが可能になります。
まとめ:「お引き立てにあずかり」営業職が適切に活用するには?
いかがでしたでしょうか?
「お引き立て」は、日頃の感謝を伝えるための言葉であり、「引き立てを受けることに対する感謝を述べる表現」として使用されることが一般的です。そのため、目上の方や取引先など、敬意を払うべき相手に向けて用いるのが適切です。
特に、「お引き立てにあずかり」は、ビジネスシーンにおいて定型句としてよく使われます。だからこそ、その意味を正しく理解し、シチュエーションに応じて適切に使い分けることが重要です。
また、この表現は手紙やメールの冒頭や結びに使用されることが多いため、誤った使い方をすると、相手に違和感を与える可能性があります。ビジネス上のやり取りでは、印象に残りやすい部分だからこそ、慎重に使うようにしましょう。
日々の業務の中で、この表現を活用できる場面に出会ったら、ぜひ積極的に使ってみてください。適切な言葉遣いでお客様や取引先と接することができれば、あなたの印象はより一層良くなるはずです。
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