「ご所望」という言葉を耳にしたことはありますか?
一見、丁寧で格式のある表現ですが、実はその使い方に少しした誤解を招くこともあります。この表現は、「欲しい」「希望している」という意味を持ちながら、第三者に対して使う敬語の一種です。
しかし、意外にもその使い方には注意が必要です。例えば、ビジネスの場面で頻繁に目にする「ご所望」という表現、実際にはどう使い分ければ良いのでしょうか?
今回は「ご所望」の正しい意味、使い方、さらには類語との違いについて詳しく解説していきます。
ご所望の意味
「ご所望(ごしょもう)」は、欲しいという意味の「所望」に、敬意を表す接頭語がついた表現です。
この言葉は自分ではなく、相手に対して使うものだと理解できます。
元々の意味は、「欲しいと望む」「それを欲しいと思っている」というものです。
敬語が付いているため、「私は○○をご所望です」とは使いません。あくまで第三者に対して使う表現です。
「ご所望ですか?」や「ご所望なさいますか?」という形で質問することができ、これが「ほしいですか?」という意味になります。
類似の言い換え表現には、「ご希望」や「ご入用」などがあります。
「ご所望」の使い方
「ご所望の商品の準備が整いました。」 (あなたが欲しいと思っていた商品が準備できました)
「こちらがご所望の商品です。」 (これがあなたが求めていた商品です)
このように、「ご所望」とは「欲しいもの」や「希望していたもの」を指し、主に物をリクエストする場面で使われます。
また、質問形式でも使用できます。
「ご所望の商品はこれですべて揃っていますか?」 (あなたが求めていた商品はすべて揃っていますか?)
元々、希望するものは「物」に限らず「状況」などにも使われ、例えば時代劇では「我が殿はご休息をご所望じゃ」のように、「その状況を希望する」という意味でも使われます。
しかし、現代では「状況の希望」に関しては「ご要望」や「ご希望」を使うことが一般的になっています。
「ご所望」と「ご要望」の違い
「ご所望」と似た言葉に、「ご要望」があります。この二つにはどんな違いがあるのでしょうか?どちらも「望む」という意味では似ていますが、望む対象やその範囲に違いがあります。
「ご要望」は、主に「手段や方法」を望む時に使われることが多く、一方で「ご所望」は物理的なものを求める場合によく使用されます。
さらに、「ご要望」は抽象的な事柄や複数の対象を望む時に使われることが多く、対して「ご所望」は特定のものを指す場合に用いられます。
「ご所望」を使った言い回し30選
以下に「ご所望」を取り入れた例文を挙げます。
- 食前には、温かいお茶を一杯所望いたします。
- ご所望の品、〇〇が完成しました。
- ご所望の方がいらっしゃいましたら、どうぞお声掛けください。
- ご所望の商品が準備できましたので、ご来店をお待ちしております。
- どのデザインをご所望でしょうか?
- ご所望の際は、メールかお電話でスタッフにご相談ください。
- 鑑賞中にブランケットをご所望の方は、フロントスタッフにお伝えください。
- ご所望とあらば、予約なしでも受付いたします。
- お嬢様よりご所望の品物をご用意いたしました。
- 1日分の空き枠がございますので、ご所望の方はご連絡をお待ちしております。
- サンプルもご用意しておりますので、ご所望の方はお知らせください。
- 戸建てをご所望でしたら、現在おすすめの物件をご紹介いたします。
- お席に空きがございますので、ご所望の方はご連絡をお願いいたします。
- ご所望いただいた商品は、郵送でのお届けを承ってよろしいでしょうか?
- こちらの品をご所望でしたら、スタッフまでご相談ください。
- 大切なお客様のご所望とあらば、どんな手段を尽くしてでもご用意いたします。
- ご所望の商品がある場合は、◯日までにご連絡をお願いいたします。
- 見学をご所望の場合は、当日でも受付可能ですのでお知らせください。
- 本日新商品が入荷しましたので、ご所望の方がいればご連絡をお願いいたします。
- こちらがご所望の資料となります。
- もしご所望とあらば、すぐに◯◯をご用意いたします。
- お客様のご所望のカタログをお持ちいたしました。
- 購入時には、あまり大きくない旅行かばんを所望します。
- ご所望の商品は、こちらで間違いございませんでしょうか?
- 土日の公演チケットをご所望の方は、抽選となりますのでご了承ください。
- ご所望の方がいらっしゃいましたら、お気軽にスタッフにお声掛けください。
- この度は、弊社の商品をご所望いただき、誠にありがとうございます。
- あちらのお客様がコーヒーをお願いしたいとのことです。
- こちらの品をご所望でしたら、店員にお知らせください。
- ご所望でしたら、直ちに手配させていただきます。
「ご所望」の誤用例
- コーヒーを一杯ご所望いたします。
- 貴社訪問は来週ご所望の通りです。
- ○○社をご所望したにも関わらず、結果的に不採用となりました。
- ゴルフ場建設に関して、近隣住民からご所望を受けています。
- 今回いただいたご所望は、今後の活動に役立てさせていただきます。
- ご所望に応じることができず、誠に申し訳ありません。
- 貴重なご所望を頂戴し、感謝申し上げます。
これらの表現は適切ではありません。
「所望」の類似語
「所望」は「何かを欲しがる、願う」という意味を持ち、その意味に近い言葉として以下のような単語があります。
- 希望
- 願い
- 志望
- 欲望
- 願望
- 注文
- 要求
状況に応じて、これらの言葉を適切に使い分けることが大切です。
「ご所望」をビジネスでどう活用するか
「所望」は、何かを望んで求めるという意味を持つ名詞ですが、「所望する」と動詞に変えることができます。さらに、この言葉を敬語として使う場合、尊敬語では「所望される」、謙譲語では「所望いたす」、丁寧語では「所望します」となります。
特にビジネスシーンでは、尊敬語と謙譲語を適切に使い分けることが求められるため、このスキルを身につけておくことが重要です。もし敬語に自信がない場合、今からでも学んでいくことをおすすめします。
正しい敬語や言葉遣いを使うことで、相手に良い印象を与え、仕事もスムーズに進めることができるでしょう。しっかりとこのスキルを身につけ、ビジネスでの関係を良好に築いていきましょう。
「ご所望」や「ご要望」を上手に使うことで、相手の気持ちを適切に表現できるようになり、仕事の中で信頼を深める手助けになります。人間関係が良好であれば、ビジネスチャンスも増えるため、紹介した類語も含めて、豊かな人間関係を作り上げていくことを心掛けましょう。
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