ビジネスシーンにおける「賜る」という言葉の使い方は、非常に重要です。
日本語において、この言葉は目上の人から何かを受け取る際に使う謙譲語として、また相手からの行為や気持ちに対して感謝の意を込めて使うことができます。
しかし、その使い方には注意が必要です。正しく使うことで、あなたの敬意や感謝の気持ちを的確に伝えることができますが、使い過ぎや間違ったタイミングで使用すると、逆に不自然に感じられることもあります。
本記事では、「賜る」の意味とその使い方、さらにビジネスシーンで注意すべきポイントについて詳しく解説します。
「賜る」の意味
「賜る(たまわる)」は、主に「もらう」の謙譲語として使われる言葉です。
目上の方から物や行動、気持ちを受け取る際に「いただく」という表現がよく用いられますが、「賜る」はそのさらに上位の表現となります。
重要な商談などでも使われるほか、神事などの正式な場面でも見かけます。そのため、謙譲語の中でも最も丁寧な言い回しとして位置づけられます。
この言葉を使うことで、私たちは「これをもらうのは過分だ」「非常に良いものをいただいている」といった、深い感謝とへりくだった気持ちを伝えることができます。
また、「賜る」は尊敬語として使われることもあります。目上の方が物や行動、気持ちを「与える」際に用いられる表現です。
例えば、「〇〇社長からのご支援を賜り、この地域に活気が戻りました」といったように使われます。
「賜る」の使い方
前述したように、「賜る」には謙譲語と尊敬語の2つの使い方があります。
どちらも「何かをもらう」「何かをしてもらう」という意味がありますが、使う相手によって使い分けが必要です。
それでは、具体的に「賜る」の使い方を見ていきましょう。
ビジネス文書や正式な場面で使う「賜る」
「賜る」は非常に丁寧な表現であり、日常会話ではあまり使われません。主に、ビジネス文書やスピーチなど、フォーマルなシーンで使用される言葉です。
例えば、お礼の言葉や挨拶の中で使うことが多く、以下のような表現になります。
- 「ご支援を賜り、ありがとうございます」
- 「記念品を賜りました」など
こうした表現は、非常に丁寧で堅苦しい印象を与えることがあるため、友人や親しい上司などには使わない方がよい場合もあります。
「もらう」の謙譲語として使う「賜る」
「賜る」は目上の人から何かを受け取る際に使われる謙譲語です。自分が「もらう」行為をへりくだって表現することで、相手に対する敬意を表します。
例えば、次のような表現で使います。
- 「お言葉を賜りました」
- 「記念品を賜りました」
「与える」の尊敬語として使う「賜る」
相手が自分に何かを与える場合、「賜る」は尊敬語として使われます。相手が何かをしてくださることに対して、敬意を込めて表現する言葉です。
例として、以下のように使われます。
- 「ご支援を賜り、誠にありがとうございます」
また、目上の方に何かをお願いする場面でも、より丁寧な言い回しとして使われます。
- 「ご理解賜りますようお願い申し上げます」
- 「ご列席賜りますようお願い申し上げます」
「賜る」と「承る」の違い
「賜る」の類似語として「承る」がありますが、両者には明確な違いがあります。
「承る」は、対面のやり取りだけでなく、文書、メール、伝言、注文などの場面にも使える敬語で、ビジネスシーンでは広く使用されます。
どちらもビジネスで頻繁に使用される表現ですが、意味と使い方の違いをしっかり理解し、適切に使い分けることが重要です。
「賜る」は、主に「もらう」や「与える」といった意味を持ち、目上の人から物をもらう時や、お願いする時に使用されます。
一方で「承る」は、「引き受ける」や「了解する」といった意味があり、主に「伝言を受ける」や「注文を受ける」際に使われます。
また、「承る」は、厚意や助言などに使うことが一般的で、品物に関しては使用しない点に注意が必要です。
「賜る」のおすすめ例文30選
- 今回の展示会において、貴社にご協力賜り、誠にありがとうございます。
- 来賓の皆様からお言葉を賜りたく存じます。
- 先日は貴重な品を賜り、部署全員で有難くいただきました。誠にありがとうございました。
- 今年度の目標数値を達成し、会社から貴重な記念品を賜りました。
- 何卒ご協力を賜りたく、改めてお願い申し上げます。
- 社内の感染症対策について、是非とも藤原様からご意見賜りたく存じます。
- 今回は積み重ねた営業努力が実を結び、社長賞を賜りました。
- 平素は格別なご愛顧を賜り誠にありがとうございます。
- 今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。
- 佐々木代表にはお忙しい中ご足労賜り、心より感謝申し上げます。
- 遠方からの参加に値する内容で、田中教授から有意義なお話を賜りました。
- 木村様にはお忙しい中、ご出席賜りまして、心から感謝申し上げます。
- 引き続きご高配を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。
- 今年は積み重ねた営業努力が実を結び、社長賞を賜りました。
- 長年の貢献を評価していただき、社長から記念品を賜りました。
- 早速の心温まる年賀状を賜り、誠にありがとうございました。
- 業界で一人前として活躍できるよう、今後ともご指導ご鞭撻を賜りたくお願い申し上げます。
- 価格改定に関して、御社からのご意見を賜りたく存じます。
- 今後の支社の方向性について、貴重なご意見やご指導を賜れれば幸いです。
- 社内のコロナ対策の件について、ぜひ滝沢様よりご意見賜りたく存じます。
- 来賓の方々からお言葉を賜りたいと存じます。
- 今後ともいっそうのご高配を賜りたく、重ねてお願い申し上げます。
- この度の休業に関しまして、皆様のご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
- ただいま佐藤様よりご紹介賜りました、加藤直樹と申します。
- 今回はご契約いただき、さらにお土産まで賜り、大変恐縮です。
- 細川代表にはご多用な中ご光臨を賜りまして、誠にありがとうございます。
- 今日のおかげさまでありがたい話を賜りました。
- 先生からご指導とお力添えを賜りおかげさまで合格することができました。
- 今年も変わらぬご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
- 挨拶を賜りたく存じますので、よろしくお願いいたします。
「賜る」の誤用例
- 商品のサイズはM、数量は30個でお届けいたします。引き続きよろしくお願いいたします。
- お客様からのメッセージを、私、山本が承りました。
- 今回のご依頼は納期の都合で対応できません。
- 現在、田中は外出中ですので、メッセージをお預かりします。
- いただいた情報によると、佐藤様が体調を崩されたようです。
- ご依頼いただいた見積もりについて、承知しました。
- 日程の変更について、確かにお聞きしました。
このような使い方は誤りですので、注意が必要です。
「賜る」の使い方をビジネスマンはどう捉えるか
「賜る」は格式のある場面や文書で使われる、非常に堅い表現です。そのため、この言葉を使用する場面や頻度には十分な配慮が必要です。
上司や年上の方に使う場合でも、親しい関係の相手には不自然に感じられることがあります。「過剰に礼儀正しい」や「堅苦しい」といった印象を与えてしまう可能性があるため、注意が必要です。
また、あまりに多く使い過ぎると、逆に軽薄に受け取られかねません。そのため、使い方を慎重に選ぶべきです。
日常的な事柄に対しては、「賜る」ではなく、もっとカジュアルな言い回しを選ぶ方が適切な場合もあります。状況に応じて言葉を使い分けることが大切です。
ビジネスの現場では、「賜る」に似た言葉である「承る」をよく耳にします。そのため、これらの言葉を混同しないように時々確認することが大切です。
正しい場面で「賜る」を適切に使用できるよう、ただ読むだけでなく声に出して練習することで、理解が深まります。そうすることで、重要な場面で確実に使いこなせるようになります。
「賜る」は、適切に使用すると、フォーマルな場面で力を発揮する言葉です。この表現を上手に使いこなせると、ビジネスのスキルが一段階向上すること間違いなしです。
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