ビジネスシーンやフォーマルな場面では、言葉遣いが相手に与える印象を大きく左右します。その中でも「申し上げます」という表現は、自分をへりくだりつつ相手への敬意を最大限に示す謙譲語として、多くの場面で活用されています。
「申し上げます」は単なる敬語ではなく、「言わせていただく」「させていただく」といったニュアンスを持ち、丁寧で堅い印象を与える言葉です。適切に使いこなすことで、相手とのコミュニケーションを円滑に進めるだけでなく、信頼感を高める効果も期待できます。
この記事では、「申し上げます」の正しい意味や使い方、具体的な活用例、誤用例について詳しく解説します。日常の会話やビジネスでさらに洗練された敬語表現を身に付けたい方は、ぜひ最後までお読みください。
「申し上げます」の意味とは?
「申し上げます」という表現は、基本的に「言う」という動作を丁寧に示す敬語表現です。この言葉を用いることで、自分の意見や依頼を謙虚な姿勢で伝えることができます。
たとえば、お願いや説明の際に「申し上げます」を末尾に付け加えることで、自分の立場を低くし、相手への敬意を示すことができます。
特にビジネスの場面では、「申し上げます」という言葉は頻繁に使われます。この表現を通して、相手に対する敬意が自然と伝わり、丁寧な印象を与えることができます。
「申し上げます」の正しい使い方
「申し上げます」を使用する際には、相手が自分よりも立場が上であることを前提にする必要があります。この表現は、相手に対して失礼にならないように、自分の立場を慎重に示すために使われるものです。そのため、上司や取引先、お客様といった相手に対して用いられることが多い表現です。
自分を低める敬語表現
「申し上げます」は、自分をへりくだることで、相手への敬意を示す表現です。自分の意見やお願いを控えめに伝える際に適しています。
一方で、「申し上げる」と似た言葉に「申す」がありますが、この二つは使い分けが重要です。「申す」は単に丁寧に述べる場合に使用しますが、「申し上げる」はより謙遜した表現となります。
例えば、自己紹介をする場合には「私は○○と申します」と表現するのが正しく、「私は○○と申し上げます」というのは誤りです。この違いを理解して適切に使い分けることが大切です。
「申し上げます」を使った活用例30選
- 貴社のますますのご繁栄を拝見し、ぜひとも当社とのご縁をお願い申し上げます。
- 拝啓 時下ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
- ご確認のほどよろしくお願いいたします。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
- 本文の執筆に際し、多大なるご助力を賜り深く感謝申し上げます。
- 雨天の中ご来店いただきましたことに心より感謝申し上げます。
- 貴社にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
- 貴社のさらなるご繁栄をお祈り申し上げます。
- 暑中お見舞い申し上げます。
- 恐れ入ります。新栄商事の高橋と申しますが、吉村部長におつなぎいただけますでしょうか。
- 何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
- このたびの創立50周年を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。
- どうぞよろしくお願い申し上げます。
- 被災された皆様にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。
- 多くの方をお誘いのうえ、ぜひご参加くださいますようご案内申し上げます。
- 今後このような不手際を繰り返さぬよう、業務改善に努めることをお誓い申し上げます。
- この場をお借りしてお詫び申し上げます。
- 本来ならば直接お伺いしてお願い申し上げるべきところではございますが、
- この度の事態によりご不便をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。
- 条件に関する詳細をご説明申し上げたく、ご連絡いたしました。
- プロジェクト成功の折、今後のさらなる飛躍をお祈り申し上げます。
- ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお申し付け申し上げます。
- 状況が整いました際に改めてご連絡申し上げます。お目にかかれる日を楽しみにしております。
- 心より深く御礼申し上げます。
- 詳細については後日改めてご案内申し上げます。
- 行き違いがございましたら申し訳ございません。至急ご確認いただきたくお願い申し上げます。
- これもひとえに皆様のご支援の賜物と、深く感謝申し上げます。
- 佐藤様のさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。
- 謹んで哀悼の意を表し申し上げます。
- 来期事業の詳細について、ご説明申し上げます。
- 恐縮ながら、御礼の品を同封いたしましたので、どうぞお納めくださいますようお願い申し上げます。
「申し上げます」の誤用例
以下は「申し上げます」を誤って使用した例です。適切に使うためには、これらの表現を避ける必要があります。
- 購入後の対応に不満があったので、苦情を申し上げました。
- (目下の人に向かって)田中君、この書類を整理していただけますかとお願い申し上げます。
- お困りの際には、どうぞお気軽にお申し上げください。
- 私は鈴木一郎と申し上げます。
- 山本に折り返し電話をするよう、申し上げておきます。
- 会議中、課長はこう述べ申し上げられました。
- 彼は会議で自身の意見を申し上げたそうです。
これらの使い方は誤っています。「申し上げます」は、自分の発言や行動をへりくだって表現する敬語であり、適切な場面と相手を選んで使う必要があります。ぜひ参考にして、正しく活用してください。
「申し上げる」とその類語
小学館のデジタル大辞泉では、「申し上げる」と似た意味を持つ言葉として、次の三つが挙げられています。
- 申す(もうす)
- 啓する(けいする)
- 奏する(そうする)
「申す」の使い方
「申す」は「言う」を丁寧に表現する際に使用します。例えば、次のようなフレーズでよく使われます。
- 「一口にエンジニアと申しても…」
- 「私は佐藤と申します。」
ただし、「申す」は丁寧語であり、謙譲のニュアンスが不足するため、相手に特に敬意を示す必要がある場面では「申し上げます」を用いる方が適切です。
「啓する」と「奏する」
一方、「啓する」と「奏する」は、それぞれ皇族や天皇に対して用いられる表現であり、ビジネスの場面では使う機会はほとんどありません。
「申し上げます」と「いたします」の違い
「お願い申し上げます」と「お願いいたします」、「感謝申し上げます」と「感謝いたします」。どちらを選べば良いか迷ったことはありませんか?
判断基準となるのは、これらの表現が一緒に使われる言葉のニュアンスです。
- 「いたします」
「いたします」は柔軟性が高く、ポジティブな意味でもネガティブな意味でも使うことができます。例えば、「ご迷惑をおかけいたします」のように、謝罪の表現としても適しています。 - 「申し上げます」
一方で、「申し上げます」はポジティブな意味を持つ言葉としか一緒に使われません。たとえば、「感謝申し上げます」といった使い方は適切ですが、「ご心配をおかけ申し上げます」という表現は誤用となります。これは、「申し上げます」が「〜して差し上げます」という相手への配慮や良い意図を示す言葉だからです。
シーンに応じた使い分けを
「いたします」はどんな場面でも無難に使える万能な表現です。しかし、状況や相手との関係性を考慮し、「申し上げます」も適切に取り入れることで、より丁寧で洗練された印象を与えることができます。会話の流れを見ながら、両者を上手に使い分けるよう心がけましょう。
まとめ:ビジネスでの「申し上げます」の使い方
「申し上げます」という言葉は、自分を謙虚にし、相手への敬意を示す際に使用される表現です。この言葉は「言わせていただく」の意味に加え、動詞「する」に相当する「させていただく」というニュアンスで使われることもあります。
また、「申し上げます」と「おっしゃる」の使い分けを理解しておくことが重要です。このポイントを押さえれば、「申し上げます」をほぼ完璧に使いこなせるようになるでしょう。
ただし、「申し上げます」は非常に丁寧で堅い表現のため、多用するとくどい印象を与えることもあります。そのため、「します」や「いたします」といった表現とバランスよく使い分けることが大切です。
ビジネスシーンにおける重要性
「申し上げます」は、ビジネスの場面で頻繁に使用される敬語表現であり、さまざまなシーンで活用できる便利な言葉です。ビジネスに限らず、円滑なコミュニケーションを築くためにも欠かせない表現といえます。
特に社会人にとって敬語の正しい使い方は必須のスキルです。特に若手社員は、社内外を問わず謙譲語を使う機会が多いため、「申し上げます」を適切に使えるように習得しておくことが求められます。
スキルアップのための基本
言葉遣いは、仕事での成長やスキルアップにも直結します。「申し上げます」を正しく使いこなすことで、信頼されるビジネスパーソンとしての印象を高めることができます。日常的に敬語を意識しながら、すぐに実践で活用できるよう訓練していきましょう。
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