「かねてより」という言葉は、日常会話やビジネスシーンでよく使われる表現の一つですが、その意味や使い方に少し疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
この言葉は「以前から」や「前もって」といった意味を持ち、しばしば敬語や堅い表現として用いられます。
しかし、意外にその使い方に迷いが生じることもあります。
この記事では、「かねてより」の正しい意味や使用法、さらに似たような表現との違いを解説し、ビジネスで適切に使えるようになるためのポイントを押さえていきます。
「かねてより」の意味と使い方
「かねてより」は「以前から」や「前もって」といった意味を持つ言葉です。
この表現は、漢字で書くと「予ねてより」や「兼ねてより」となりますが、どちらも同じように使われます。
また、「かねてから」という表現も一般的で、意味は同じですが、「かねてより」の方が古くから使われていた言葉です。言葉としての時代差はあるものの、どちらも同様の場面で使用可能です。
漢字で表記する場合、特に「予ねてより」がよく見かけられます。さらに、ひらがなで「かねてより」と書くのが最も一般的です。
では、「予ねてより」と「兼ねてより」の違いは何でしょうか?
「予ねてより」の「予」は、訓読みで「前もって」や「あらかじめ」という意味を持っています。旧字では「豫」や「予」が使われ、あらかじめ準備する、というニュアンスが含まれています。
一方で、「兼ねてより」の「兼」は、古語の「兼ぬ」に由来し、「前もって心配する」や「予測する」という意味を持ちます。「兼ねる」という現代語の意味(「二つ以上を一緒にする」)とは異なり、こちらも別のニュアンスです。
現代語で使われる「兼ねる」には、「複数を同時に扱う」という意味があり、これが古語の「兼ぬ」の意味とは少し違うため、「兼ねてより」を使うと意味が混乱する可能性があります。
そのため、現代では「予ねてより」の方が好まれる傾向にあります。また、ひらがなで「かねてより」と表記するのが最も一般的であり、使いやすいです。
「かねてより」を使った文例30選
「かねてより」の表現を使った例文を以下にご紹介します。
- かねてよりお願いしておりました案件について、進捗状況をお聞かせいただけますか?
- かねてよりお知らせしていたプロジェクトに関して、少しご相談したいことがあります。
- かねてよりお伝えしている計画について、実行を進めさせていただきます。
- かねてよりご案内申し上げております通り、弊社は今月より社名変更を行いました。
- かねてより坂本様のご功績を存じ上げており、そのご活躍に敬意を表します。
- かねてより準備を進めていた新商品が、いよいよ発売の運びとなりました。
- かねてよりお願いしていた資料の提出について、今週中に間に合うでしょうか?
- かねてより、母が希望していた一戸建ての購入が決まり、父も納得しています。
- 定年後、かねてより計画していた夫婦での世界一周の旅を実現しました。
- かねてより懸念していた価格競争がついに始まりましたが、弊社は品質重視で戦います。
- かねてより投資に興味があったため、ボーナスを資産運用に充てています。
- かねてより知っていたB社と、来週訪問面談のアポイントを取ることができました。
- かねてより貴社の事業に強い興味を持っており、必要な資格と経験を積んでまいりました。
- かねてより探していた財務部の人材について、私の元教え子が適任ですので推薦させていただきます。
- かねてより松戸市で進めていた弊社工場が完成し、4月1日から操業を開始します。
- かねてより開発を進めていた新しい○○○の後継機種が、ついに完成いたしました。
- かねてより観たかった枝垂れ桜を、ついに見ることができる機会が訪れました。
- かねてよりご提案している新ソフトウェア導入の件について、進捗状況はいかがでしょうか?
- かねてよりお願いしている貴社工場の見学に関して、その後の状況をお教えください。
- 業界内で高名な高田社長に、かねてよりお会いしたいと思っておりました。
- かねてよりご親交を深めていただいている水島様には、感謝の気持ちでいっぱいです。
- かねてより支援をいただいている皆様に、重要なお知らせをさせていただきます。
- かねてより梶原様のご活躍を伺っており、ますますご活躍されていることを喜ばしく思います。
- かねてよりお世話になっている鈴木さんについて、少しお話をさせていただきます。
- かねてよりご案内していた懇親会が本日終業後に開催されますので、ぜひご参加ください。
- 彼はかねてより夢見ていた建築設計士の職に就くことができました。
- 希望する職に就くためには、かねてより情報を集める努力が必要です。
- かねてより狙っていた商品が大幅に割引されているのをオンラインショップで見つけました。
- 課長、かねてより提案していた企画がようやくクライアントに認められました!
- なるほど、彼女が全国一の成績を収めた理由は情熱にあるのですね。かねてより抱いていた疑問が解けました。
「かねてより」のNG例
- かねてよりお願いしていた資料の作成は、今すぐにでも取り掛かってください。
- 今日は忙しくないので、かねてより事務所の掃除をしてみましょうか。
- かねてより申し上げていますが、約束の時間はきちんと守っていただきたいです。
- かねてよりご迷惑をおかけしますが…
- かねてより申し上げるべきでしたが、私、○○社の谷口でございます。
- かねてより申し上げておりますが、桜井は現在外出中です。
- かねてよりのお心遣いに感謝しつつ、本日お越しいただきまして…
これらの表現は、言葉の使い方として不適切です。
「かねてより」の類語
「かねてから」は「かねてより」と同じ意味
「かねてから」は「以前から」や「前もって」という意味を持つ副詞です。
この表現は、「かねてより」と重複した意味を持ちますが、言い換えとして使うことができます。
「以前より」だと、やや穏やかな表現に
「以前より」や「以前から」も「前もって」を意味しますが、これらの表現は「かねてより」よりも、過去から続いているというニュアンスが強くなり、柔らかい印象を与えます。ビジネスシーンや日常会話でよく使われます。
「かねがね」なら、さらに強い継続の意味に
「かねがね」は「兼ね兼」や「予予」と書き、こちらも「以前から」を意味する副詞です。 「かねがね」は「以前より」や「かねてより」よりも、これまで続いてきたという意味合いが強調されます。
「かねてより」を営業マンはどう活用するか
「かねてより」という表現は、厳密には重複表現に当たりますが、既に一般的な使い方として広まっており、ビジネスシーンではよく使用されています。
同じ意味を持つ言葉がいくつかありますが、「かねてより」は、過去から続いているという意味を伝える際に、堅実でしっかりした印象を与えます。
誤った使い方を避けるためにも、例文を参考にしながら、正しく使えるよう理解を深めましょう。普段無意識に使っている言葉でも、その由来や類似の表現について知っておくことで、誤用に気づきやすくなります。
「かねてより」を日常的に使用している方は、これから「予てより」を使う際に、漢字や重複表現に気をつけてみてください。また、あまり使ってこなかった方も、日常的に使い始め、いずれはビジネスシーンなどでも適切に使えるように練習しておくと良いでしょう。
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