日本語には、日常会話ではあまり使われないものの、文語表現やフォーマルな場面で見かける言葉が数多くあります。「ひらに」もそのひとつです。
皆さんは「ひらに」という言葉を聞いたことがありますか?現代ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、時代小説や古典文学、さらにはビジネスシーンなどで目にすることがあります。
例えば、時代劇で「ひらにご容赦ください」といったセリフを聞いたことがあるかもしれません。何となく「謝罪」や「お願い」の意味があると感じる方もいるでしょうが、実際にはどのような意味や使い方があるのでしょうか?
本記事では、「ひらに」の意味や語源、正しい使い方について詳しく解説し、ビジネスメールやフォーマルな場面での活用例を紹介していきます。
それでは、さっそく「ひらに」の意味を見ていきましょう。
「ひらに」の意味とは?
まず、「ひらに」という言葉にはどのような意味があるのかを確認してみましょう。
辞書には以下のように記載されています。
- 「相手に懇願するさま。何とぞ、どうか。」
- 「許しを請う際に、強く願い求める意味合いを持つ表現。」
例えば、「平にご容赦ください」というフレーズは、「どうかお許しください」「何とかお見逃しください」といった意味で使われます。
「ひらに」は漢字で「平に」と書きます。
「平身低頭」や「平伏」という言葉があるように、「平」という漢字には、相手に対して極めて謙った態度を示し、ひたすらお願いするというニュアンスがあります。
つまり、「ひらに」には、
「どうか」「何とか」「何としても」「ひたすら」「切に」
といった強い願望や懇願の気持ちが込められているのです。
「ひらに」の使い方について
「ひらに」は、主に相手に許しを請う場面で使われる表現です。
たとえば、「ひらに謝る」という言い方は、「心から申し訳なく思い、ひたすら謝罪する」という意味になります。
また、「ひらにお許しください」と言えば、「どうか、何とかお許しください」といった、強い懇願の気持ちを込めた表現になります。
このように、「ひらに」は、相手に対して深く謝罪し、許しを求める際に用いられる言葉です。
少し文法的な視点から見ると、「ひらに」は副詞として機能し、そのニュアンスには、
- 「穏やかに収めてほしい」
- 「できる限り円満に解決してほしい」
- 「どうか寛大な対応をお願いしたい」
といった意味が含まれていると考えられます。
「ひらに」を用いたおすすめの例文30選
以下に、「ひらに」を使用した例文を挙げました。状況に応じてご活用ください。
- 「商品の配送が遅れておりますこと、ひらにご容赦ください。」
- 「先日の打ち合わせでの不手際につきまして、ひらにお詫び申し上げます。」
- 「この度の不始末につきまして、何卒ひらにご寛容のほどお願い申し上げます。」
- 「資料の誤記載がございましたこと、ひらにご容赦いただきますようお願い申し上げます。」
- 「弊社の対応に不備がございましたこと、ひらにご容赦くださいますようお願い申し上げます。」
- 「昨日お伝えした情報に誤りがありました。ひらにご容赦のほどお願い申し上げます。」
- 「お客様のご希望に沿えず、誠に申し訳ございません。ひらにお許しいただければと存じます。」
- 「突然のご連絡、失礼いたしました。ひらにご容赦ください。」
- 「当日は混雑が予想されますので、何卒ひらにご了承くださいますようお願い申し上げます。」
- 「ご予約内容の変更がございましたため、ひらにご理解のほどお願い申し上げます。」
- 「天候の影響により、イベントが中止となる可能性がございます。その際はひらにご容赦ください。」
- 「大変恐れ入りますが、在庫が終了次第、販売を終了とさせていただきます。ひらにご了承くださいませ。」
- 「ご不便をおかけいたしますが、期間中の対応が難しいため、ひらにご理解のほどお願いいたします。」
- 「講義中の見学は可能ですが、静粛にお願いいたします。ひらにご協力をお願いいたします。」
- 「当店の料理は食材の都合により変更する場合がございます。ひらにご了承くださいませ。」
- 「社内規定により、ご希望に添えかねる結果となりました。ひらにご了承のほどお願いいたします。」
- 「申し訳ございませんが、今回のご依頼はお受けしかねます。ひらにご理解のほどお願いいたします。」
- 「今後は再発防止に努めますので、ひらにご容赦くださいますようお願い申し上げます。」
- 「宴会のご予約は、事前にお問い合わせいただきますよう、ひらにお願い申し上げます。」
- 「資料送付が遅れましたこと、ひらにご容赦いただきますようお願い申し上げます。」
- 「突然の訪問、大変失礼いたしました。ひらにご容赦ください。」
- 「お約束の時間に遅れましたこと、ひらにお詫び申し上げます。」
- 「この度の誤解を招く発言につきまして、ひらにご寛恕のほどお願い申し上げます。」
- 「会場の準備が間に合わず、ご迷惑をおかけしました。ひらにご容赦願えれば幸いです。」
- 「貴重なお時間を割いていただいたにもかかわらず、至らぬ点がございましたこと、ひらにお詫び申し上げます。」
- 「ご要望に対応できず、大変申し訳ありません。ひらにお許しくださいますようお願い申し上げます。」
- 「本状と行き違いでご対応いただきました場合は、ひらにご容赦願います。」
- 「工事の関係で、一時的にご迷惑をおかけいたします。ひらにご理解くださいますようお願いいたします。」
- 「大変勝手ながら、しばらくの間、休業とさせていただきます。ひらにご容赦ください。」
- 「お手紙でのご挨拶となりますこと、ひらにご容赦くださいますようお願い申し上げます。」
「ひらに」を適切に活用し、ビジネスシーンやフォーマルな場面でのやり取りをより丁寧なものにしましょう。
「ひらに」を用いたメール文例
「ひらに」を活用したメールの文例をご紹介します。適切な場面でご活用ください。
商品不良に関するお詫び
件名:商品不良のお詫び
株式会社○○
松本 様
いつも大変お世話になっております。
このたびは、弊社より納品させていただいた製品の一部に不具合があったとのご指摘をいただき、誠に申し訳ございません。
早速、原因調査を進めるとともに、今後このような事態を未然に防ぐため、管理体制の強化に努めてまいります。何卒、平にご容赦賜りますようお願い申し上げます。
併せまして、本日代替品を発送いたしましたので、到着次第ご確認いただけますと幸いです。
まずは取り急ぎ、メールにてお詫び申し上げます。
引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
――――――
メール署名
――――――
社内上司へのミス報告
件名:手配ミスのお詫び
佐々木 課長
大変申し訳ございません。
下記ご注文分に関しまして、私の手配ミスにより誤った商品を納品してしまいました。
今朝、○○商事の○○様よりご指摘をいただき、確認したところ、私の発注ミスが原因であることが判明いたしました。自らの不注意によってこのような事態を招いてしまい、深く反省しております。
現在、至急再手配を進めており、通常納期は○月○日となりますが、可能な限り前倒しできるよう、関係部署と調整中です。確定次第、改めてご報告いたします。
【今後の対応】
- 最速納期での再手配(現時点では○月○日見込み)
- 納期短縮に向けた調整を継続
このたびは私の不手際により、多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。今後は同様のミスを防ぐため、チェック体制をより強化し、再発防止に努めてまいります。
何卒、平にご容赦くださいますようお願い申し上げます。
取り急ぎ、状況のご報告まで申し上げます。
――――――
メール署名
――――――
お客様への資料誤送付に関するお詫び
件名:資料誤送付のお詫び
田中 様
このたびは弊社にお問い合わせをいただき、誠にありがとうございます。
○○株式会社の高橋と申します。
さて、早速お詫び申し上げなければならないのですが、私の手違いにより、お問い合わせいただいた内容とは異なる資料をお送りしてしまいました。せっかくご連絡をいただきましたのに、ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
誤送付に関しましては、すでに正しい資料を昨日付けで再送いたしましたので、お手元に届きましたらご確認いただければ幸いです。
今後はこのようなミスが発生しないよう、細心の注意を払い対応してまいります。改めまして、今回の件について平にお詫び申し上げます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
――――――
メール署名
――――――
「ひらに」を適切に用いることで、より丁寧で誠意のある印象を与えることができます。ビジネスシーンでの謝罪やお願いの際に、状況に応じてご活用ください。
「ひらに…」の誤った使い方と適切な表現
以下のような使い方は誤りですので、ご注意ください。
✖ 昇進を目指し、ひらに努力を続けています。
✖ ひらに多くの取引先から学び、今の自分があります。
✖ ひらにお心遣いをいただき、感謝申し上げます。
✖ ひらにお引き立てにあずかり、誠にありがとうございます。
✖ ひらに言葉もございません。
✖ ひらにご容赦のほど、心よりお詫び申し上げます。
✖ ひらに承知いたしました。
「ひらに」の正しい使い方とは?
「ひらに」は、相手に対して強く許しを請う場合に使用する言葉です。そのため、上記のように「努力」や「感謝」、あるいは「承諾」などの表現には適しません。
また、ビジネスシーンでは、お詫びの際に使うのが一般的ですが、誤用を避け、適切な場面で使うことが重要です。
ビジネスメールで大切なポイント
謝罪が必要な場合、「ひらに…」を使うことよりも、まず速やかに謝罪の意を伝えることが何よりも大切です。
ポイント①:ミスや過失に気づいたら、すぐに謝罪する
お詫びのメールは、時間が経つほど印象が悪くなるため、できるだけ早く送ることが求められます。
ポイント②:言い訳や弁解を避ける
謝罪の際に「〇〇が原因で…」「本来ならば…」といった言い訳をすると、かえって印象を損ねることがあります。
ポイント③:可能であれば、電話で先に謝罪する
メールだけで済ませるのではなく、まず電話で謝罪し、その後フォローのメールを送ることで誠意が伝わりやすくなります。
ポイント④:「ひらにご容赦ください」よりも、「申し訳ございません」を使う方が適切な場合もある
特に、自身の責任が大きい場合は、「ひらにご容赦ください」ではなく、率直に「申し訳ございません」と伝える方が誠実な印象を与えます。
「ひらにご容赦ください」は、強く許しを請う際の表現ですが、ビジネスシーンでは使用する場面を慎重に見極める必要があります。
謝罪の際には、単に表現を工夫するだけでなく、迅速な対応や誠意の伝わる行動が重要です。適切な言葉を選びながら、真摯な姿勢で対応しましょう。
まとめ:「ひらに」を効果的に活用するために
いかがでしたでしょうか?
「ひらに」は、誠意を込めて許しを請う際に使われる言葉です。
ビジネスの場面においては、誰しも一度はミスを経験するもの。
上司や取引先、お客様へ謝罪をしたことがない人はほとんどいないでしょう。
だからこそ、自らの誤りを素直に認め、できるだけ早く誠意を持って謝罪することが大切です。
これが、「ひらに」を適切に使いこなせるかどうかの鍵となるのではないでしょうか。
また、クレームやお客様からの厳しいご指摘こそが、ビジネスを成長させる貴重な機会であるとも言われます。
そうした意見を真摯に受け止め、自分自身や業務を見直していくことで、さらなる成長につながります。
成長を続ける営業マンは、ただ謝るだけでなく、そこからどう改善していくかを大切にしているものです。
ぜひ、「ひらに」という言葉を適切に活用しながら、より一層の飛躍を遂げていただければと思います。
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