「折り入って」という表現を耳にしたり、実際に使ったりした経験のある方も多いかもしれません。しかし、いざ正確に説明しようとすると難しく感じる場合もあります。ビジネスシーンで比較的目にする言葉ではあるものの、適切な場面で正しく使わなければ、相手に意図や誠意が伝わらなかったり、場合によっては失礼にあたることもあるのです。
「折り入って」は、真面目な要件(お願い・相談など)を持ちかける際の改まったニュアンスを含む表現として捉えられています。本来は重要な要望や悩みを真摯に聞いてほしい場合に使う特別な言葉です。乱用すれば「大げさ」と思われかねませんし、逆にまったく使わないと非常に丁寧な頼み方の機会を逃すことになります。
そこで今回は、「折り入って」の持つ意味、正しい使い方、そしてビジネスでの活用例をリスト形式でご紹介します。最後にはNG例も挙げていますので、参考にしてください。
「折り入って」の意味とニュアンス
基本的な意味
「折り入って」とは、「(あなたを信頼して)きちんと形を改めたうえで、特別な頼み事や重大な相談をしたい」という気持ちを表す言葉です。元をたどると「折り入る」には「改まって相手に話をする」というニュアンスがありました。
使うときの注意点
- 相手に対して「ただならぬ用件がある」という真剣さを伝える
- 軽い用事や急を要さない話には不向き
- 人前であまり気軽に使うと重みがそがれる場合がある
「折り入って」が持つ意味は、「あなたを深く信頼し、大切な話を改まってしたい」という点にあります。そのため安易な用途での多用は避け、ここぞというタイミングで活用するとよいでしょう。
「折り入って」を使うシーンの注意点
- 場面を選ぶ
- 誰もがいるオープンスペースで「折り入って」と切り出すと、周囲に緊迫感が伝わりすぎることがあります。別室や静かな場所など、落ち着いて話せる環境を用意しましょう。
- 目上の人にも失礼にならない
- 「折り入って」という言葉そのものは、上司や取引先に使っても問題ありません。大切なのは、その後に続く敬意表現や気遣いの言葉。たとえば「お忙しいところ恐縮ですが」などを添えるとより丁寧になります。
- 相談・依頼以外の提案にも使える
- 代表的な使い方としては「折り入ってお願いが…」「折り入って相談が…」が挙げられますが、内容次第では「大事なお話があるのですが」として提案や申し出にも使うことが可能です。
- メール・文書での活用
- メールや手紙でも「折り入って」を使えます。あらかじめ面談のアポイントを取りたいときに、「折り入ってお話があるので、○○さんのお時間をいただけますか」などと書くと、相手に“深刻かつ大切な要件”であることをやんわり伝えられます。
- 会話で使うときの態度と表情
- 「折り入って」を口頭で伝える場合は、言葉遣いだけでなく表情や声のトーンも重要です。軽々しい雰囲気で言うと「本気度が伝わらない」と感じられる恐れがあります。
「折り入って」のNG例
以下は「折り入って」の意味や使い方を誤っている例です。それぞれ内容が軽すぎたり、場面や言い方が適切ではありません。
- 「折り入って皆で次のイベントの飲み会の計画を立てたいんだよね。」
- 「大園さん折り入って頼みがあるんだけど、資料を10部コピーしてくれない?」
- 「この度は折り入って申し訳ございませんが、ただ挨拶に来ました。」
- 「折り入って、その書類を倉庫に片付けてもらえますか。」
- 「明日出張だから折り入って駅まで車で送ってほしいんだけど。」
- 「折り入って話があるから気軽にみんなを集めてくれないかな。」
- 「折り入って貝原様につないでいただきたいのですが、可能ですか。」
これらの例は、いずれも「特別感」「緊張感」が必要な場面とは言いにくい内容を、安直に「折り入って」で始めているため、違和感を覚えるケースです。
「折り入って」のおすすめ文例30選
ここからは、具体的なフレーズをシーン別にご紹介します。[お願い][相談][その他]の3タイプを混在させました。実際の状況に応じて参考にしてください。
▼[お願い]の場面
- 「折り入ってお願いがあるのですが、次期プロジェクトへの参加を検討いただけないでしょうか。」
- 「佐藤部長、折り入ってお願いしたいことがございます。実は部署異動の件なのですが…」
- 「恐縮ですが、折り入って一つご依頼したいことがありまして連絡いたしました。」
- 「折り入ってお願いがあり、ひとまずメールでご連絡差し上げました。お時間をいただければ幸いです。」
- 「高嶋様に折り入ってご相談というよりお願いです。来月の研修で講師をお願いできませんか。」
- 「折り入ってお願いしたいのは来週の式典に関することです。お手伝いいただきたいのですが…」
- 「お忙しいところ恐れ入りますが、折り入って一件お願いがございましてお電話いたしました。」
- 「今回ばかりは折り入ってお願いせざるを得ない状況でして、ご協力をいただけると助かります。」
- 「上原さんに折り入ってお願いしたい案件がありまして、後ほどお時間いただけないでしょうか。」
- 「折り入ってのお願いなのですが、海外出張の調整をサポートしていただけませんか。」
- 「真面目なお話で恐縮ですが、折り入って手伝いをお願いしたい作業があります。」
- 「折り入ってお願いしたい内容があるため、お手紙を差し上げました。詳細は追ってお伝えします。」
- 「今度の打ち合わせについて折り入ってお願いがあるのですが、日程変更の相談をさせてください。」
- 「河本さんに折り入ってお願いがあります。どうしてもあなたのお力が必要なんです。」
▼[相談]の場面
- 「大変恐縮ですが、折り入ってご相談があります。お時間をいただけますか。」
- 「折り入って相談したい件があるためご連絡しました。実はプロジェクトの進め方についてです。」
- 「明日の全体会議に関して折り入ってご相談したいことがあります。別途お話できますでしょうか。」
- 「折り入って相談があるのは退職に関することです。お忙しいところ恐縮ですが一度お時間を…」
- 「先日ご提示いただいたお話について折り入って相談したく、直接お会いできるとありがたいです。」
- 「折り入って相談というのは、今後のキャリアプランについてです。どうか助言をお願いします。」
- 「急な連絡で恐れ入りますが、折り入って詳しくお伺いしたいことがあります。」
- 「折り入って相談したいのは、来月の会見に向けた方針についてです。一度ミーティングをお願いできますか。」
- 「誠に勝手ながら、折り入ってご相談申し上げたい内容がありお手紙を差し上げました。詳細は…」
- 「折り入って伺いたいことがありまして、部署異動のタイミングをどうすればよいか相談したいのです。」
▼[その他]の場面
- 「折り入って一度お話ししたいことがございます。来週の金曜ご都合いかがでしょうか。」
- 「いつもお世話になっている取引先の藤崎様から折り入ってのお話があるそうです。早めに調整いたしましょう。」
- 「折り入ってひそかにお伝えしたい件がありまして、できれば二人でお話できる場をいただけると助かります。」
- 「本日ご連絡したのは折り入って大切なご提案があるからです。詳しくは直接お伝えしますね。」
- 「山本さんに折り入ってお耳に入れたいことがあります。大変重要ですのでお時間をいただきたく存じます。」
- 「こちらからお願いしたわけではないのですが、折り入っての要請が先方から届いたそうです。」
「折り入って」を活かすポイント
- 頻発させない
特別な響きがある分、日常的に多用すると緊迫感が失われます。大切な場面で使いましょう。 - 相手を選ぶ
どんな相手にもかまわず「折り入って」と言うと誤解を招きがち。相手との信頼関係があるときほど、この言葉は効果を発揮します。 - 誠実な姿勢が前提
「折り入って…」と切り出すからには、真剣な面持ちや丁寧な態度が求められます。軽いトーンで言うと逆効果です。
まとめ
「折り入って」は、ビジネスだけでなくプライベートでも使われることがある表現です。しかしその特性上、「ここぞ」というときこそ大切に使うべき言葉と言えます。真面目な依頼や重要な相談をしたい場合、あらためて時間を設けてほしいときなどに、この言葉を取り入れることで相手の意識を集中させ、誠意を伝えやすくなります。
一方で、対応する側も「折り入って」と告げられたら深刻な内容かもしれないという前提を持ち、誠実に応じる配慮が必要です。
上手に使えばビジネス上のコミュニケーションを円滑にし、人間関係の信頼を高めるきっかけになるはずです。大事なときこそ、「折り入って」という言葉を適切に使ってみてください。
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