ビジネスの現場では、「現在対応できない」「忙しくて手が離せない」といった状況を、スムーズかつ角が立たない形で伝えなければならないことがよくあります。そうしたときに便利なのが「取り込んでいますので」や「取り込み中でして」というフレーズです。
一見簡単そうに思えるかもしれませんが、使い方を誤ると「拒否の姿勢が強すぎる」「そっけない」と相手に受け止められるリスクもあります。本記事では、「取り込み中」の正しい意味や使い方を整理しつつ、ビジネスで役立つ例文・NG例を紹介していきます。短い断り文句でも印象を損なわない表現方法を身につけることで、相手との関係を良好に保ちながら業務を進められるでしょう。
「取り込み中」「取り込んでいますので」の意味とは
- 語源・本来の意味
- 「予期せぬ出来事やトラブルが発生して忙しくしている」「慌ただしい最中」というニュアンスを含んだ表現です。
- 「冠婚葬祭など落ち着かない状態にある」というイメージから派生し、現在ではビジネスシーンでも幅広く使用されています。
- ビジネスでの使われ方
- 「応対ができない」「しばらく時間を取れない」といった事情を、やんわりと示すフレーズとして使われます。
- 正直に理由を言えない場面で、「ほかの優先事項があるのでそちらを優先せざるを得ない」という意思表示をするにも有効です。
「取り込んでいますので」の上手な使い方
- 自分が忙しいときに対応を断る
相手に対して「今すぐは対応できない」というメッセージを伝えるときに役立ちます。ただし、何も説明をせずに一方的に「取り込んでいますので」と伝えると冷たく感じさせる恐れもあるため、その後に対応方法(「後ほど折り返す」「改めて日程を調整する」など)を補足しましょう。 - 相手が忙しそうなときに気遣いとして使う
「お取り込み中恐れ入りますが…」という形で、相手の状況を配慮している姿勢を示すと、用件に協力してもらいやすくなるケースもあります。特に電話やメールで連絡をするときは、この一言があるだけで印象が大きく変わります。 - “立て込んでいる”との違い
- 「取り込んでいる」:想定外のトラブルや突発的な出来事が起きていて、忙しい状態を指すことが多い。
- 「立て込んでいる」:単にスケジュールが詰まっていて手が回らない場合や、仕事が集中している状況で使われることが多い。
NG例に注意
以下のような表現は、文脈や意味が通じず誤解を招く可能性があるため、使わないように気をつけましょう。
- 「取り込んでおりましてありがとうございます。」
- 「取り込み中ですが恐縮ですが来週対応できます。」
- 「取り込んでおりますが今週は空いております。」
- 「取り込んでおり面談の余裕がありました。」
これらは相反する内容をつなげていたり、語順が不自然であったりするため、不思議な印象を与えてしまいます。「取り込んでいますので」を使う際は、忙しさや手が離せない状態を示しつつ、次のアクション(もしくは明確な断り)を入れるのがポイントです。
「取り込んでいますので」のお勧め文例20選
ここからは、具体的な使用シーンを想定した例文をランダムに並べて紹介します。人名・会社名はすべて架空ですので、ご自身の状況に合わせて適宜アレンジしてみてください。
- 同僚へのやんわりした断り
「書類作成をお手伝いできるといいのですが、今ほかの案件で取り込んでいますので、申し訳ないのですが明日以降にしてもらえませんか。」
- 上司への忙しさアピール
「松山部長、お取込み中恐れ入りますが、今朝お願いした資料はいつ頃ご確認いただけそうでしょうか。」
- 突発的な用事をこなしているとき
「急なトラブル対応に追われて取り込んでいますので、本日の会議への出席は難しいかもしれません。後ほど経緯を共有いたします。」
- 予定が詰まっているため日程調整を依頼
「株式会社エールの皆様からご連絡いただきましたが、今週は完全に取り込んでいますので、来週以降で日程を組んでいただければ助かります。」
- 担当者が不在・対応不可の電話応対
「担当の鈴木は只今取り込んでいますので、申し訳ございませんが折り返しのお電話とさせていただけますか。」
- 家庭都合をやんわり伝える
「週末のイベントですが、子どもの行事で取り込んでいますので、残念ながら今回は欠席せざるを得ない状況です。」
- 訪問営業を断るための受付応対
「大変恐れ入りますが、社長は只今取り込んでいますので、本日はご面談できかねます。改めてアポイントをお取りいただけますか。」
- 相手が忙しそうなタイミングを気遣う
「お取込み中のところ恐れ入りますが、少しだけお時間を頂戴してもよろしいでしょうか。急ぎの要件でして…。」
- 会議後に処理が山積みの状態を説明
「先ほどの打ち合わせで緊急案件が発生して取り込んでいますので、午後イチのミーティングはリスケさせてください。」
- 顧客に対する日程再調整
「ご指定いただいた日に訪問したいのですが、その日はほかの案件で取り込んでいますので、申し訳ありませんが翌週に改めてお伺いできますでしょうか。」
- 資料レビューを頼まれる場面
「新規プロジェクトの書類を確認してほしいとのことですが、今は決算に向けて取り込んでいますので、明後日には対応できるかと存じます。」
- 部下から相談を受けたとき
「すぐに相談にのりたいところだけど、今は取り込んでいますので、夕方以降で時間をとるからそれまで待ってもらえる?」
- 面談の申し出を断る
「ご訪問いただきありがとうございます。ただ、弊社の川島は只今取り込んでいますので、本日はアポイントなしでの面談は難しいかと思います。」
- 突然の電話に対して折り返しを促す
「お電話ありがとうございます。残念ながら担当者は今取り込んでいますので、後ほど折り返しご連絡させていただきますね。」
- 休日出勤で忙しい状態
「今週末は会社の重要案件で取り込んでいますので、週明けまでお待ちいただいてもよろしいでしょうか。」
- 他部署の依頼を保留
「総務部からお声掛けいただいて恐縮です。ですがこちらは只今取り込んでいますので、来週に改めてご連絡を差し上げます。」
- 課長からの追加業務を断る
「田代課長、大変申し訳ないのですが今まさに取り込んでいますので、その追加業務は少しお時間をいただけますでしょうか。」
- 別スケジュールが優先の場合
「せっかくお誘いいただいたのに恐縮ですが、来週の取材対応が急に入って取り込んでいますので、会合に参加できなくなってしまいました。」
- 外出予定が立て込んでいる状況
「来月の初旬は外回りの予定が詰まっていて取り込んでいますので、資料作成のお手伝いは中旬以降で対応させてください。」
- メールで次の連絡を誘導
「お問い合わせいただきありがとうございます。ただ、弊社担当は只今取り込んでいますので、改めてメールにて詳細をお送りいただけますでしょうか。」
「取り込んでいますので」を使うときの注意点
- 強い拒否感を与えない
断るためのフレーズとして便利な一方、「取り込んでいますので」を繰り返しすぎると“完全に拒絶されている”印象を与えかねません。なるべく具体的な代替案やタイミングを示すようにしましょう。- 例:「取り込んでいますので、翌週でしたら時間を取れそうです。」
- 敬語表現と組み合わせる
「取り込み中」自体はややカジュアルな言葉に近いため、ビジネスでは「~しておりまして」「~申し訳ございません」など敬語表現とあわせることで、丁寧さを保つことができます。 - 「立て込んでいる」との使い分けを意識
先述のとおり、「取り込んでいる」は突発的な事情を暗に含むニュアンスが強く、「立て込んでいる」はスケジュールが過度に詰まっている場合によく使います。場面に合わせて柔軟に言葉を切り替えましょう。
まとめ
「取り込んでいますので」は、相手の用件に今すぐ対応できないときや面会を断る場合など、さまざまなビジネスシーンで役立つ表現です。忙しさを言い訳にするのではなく、申し訳なさや今後の対応策をしっかり伝えることで、コミュニケーションを円滑にすることができます。
- ポイント
- 断る場合も代替策を提示:「○○日は難しいので、△△日にお時間をいただきたい」など提案する
- 敬語を交えた柔らかい言い回し:「~おりまして」「~申し訳ございません」などと組み合わせる
- 「立て込んでいる」との違いを理解:突発的な用事か、単なるスケジュール過密かを意識的に区別
上手に活用すれば、拒否や対応困難を伝える際も相手の感情を害さずに済むため、今後の取引や社内コミュニケーションにもプラスに働くでしょう。ぜひこの記事の例文を参考に、ご自分の職場環境や状況に合わせてカスタマイズしてみてください。
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