仕事関係やプライベートの宴席などで、お酒を勧められたり、何か芸や一発ネタを求められたりするときに、スマートに断れずに困ってしまった経験はありませんか。とくに目上の人や取引先などから勧められると、断るにも角が立たないか不安になることがあります。
そんな場面で役立つ表現の一つが、「不調法ですみませんが…」というフレーズです。これは自分をへりくだって表現しつつ、相手の面子を傷つけにくい形でお断りできる便利な言い回しといえます。本記事では、「不調法」の意味や使い方、さらに実際に活用できる30の文例をランダムに紹介していきますので、参考にしてみてください。
「不調法」とは?
1. 言葉の成り立ち
- 読み方:ふちょうほう
- 由来:「調法」(ちょうほう・じゅうほう)=「重宝する」「便利で使いやすい」という語の頭に、否定を表す「不」が付いて生まれた表現とされています。
2. 主な意味・ニュアンス
- 手際が悪い・配慮に欠けていること
何らかの行き届かなさや不手際があったとき、「不調法で申し訳ありませんでした」と謝罪に用いるケースがあります。 - お酒や芸事に疎いこと
「お酒に強くない」「宴席の芸ができない」というときに、「私、不調法なもので…」というように使われます。
3. 使いどころ
- 宴席でのお酒の勧めを断りたいとき
「不調法なもので…」と自分をへりくだり、失礼にならないようにやんわり辞退できる。 - 芸事やカラオケなどを求められたとき
場を壊さずに「申し訳ないのですが、私不調法でして…」と断るのに役立つ。 - 自分の不手際を謝罪するとき
「このたびの件は当方の不調法でご迷惑をおかけしました」と述べると、比較的柔らかい印象になります。
「不調法ですみませんが」NG使用例
一方で、以下のような言い方は相手に誤解を与えたり、意味が通じなかったりするため気をつけましょう。
- 「先輩は不調法ですね。」(相手を非難するニュアンスになるため不適切)
- 「貴社の社員はみんな不調法では?」(相手の会社を否定する表現となり、非常に失礼)
- 「不調法で嫌いなことは絶対やりません。」(自己都合を押し通す印象を与え、角が立ちやすい)
「不調法」はあくまで自分をへりくだって伝える語です。相手や第三者に対して「不調法だ」と言うのは、失礼な表現になりますので注意しましょう。
使い分けに要注意!「不調法」「不注意」「粗忽」
- 不調法
自分の行き届かなさや至らなさをへりくだりつつ表す。また、お酒・芸などの嗜みがないことを指すときにも便利。 - 不注意
「うっかりミス」をした際に使う表現。そそっかしさによる単純なミスを強調したいときに適しています。 - 粗忽(そこつ)
昔からある言葉で、落ち着きがなく何事にも注意散漫なさまを表す。単純なミスよりも、性格的にそそっかしいという含みが強い。
例文30選
以下では、「不調法ですみませんが」のフレーズをはじめ、「不調法」を活用したさまざまな例文を紹介します。いろいろなシチュエーションを混在させていますので、ぜひ活用シーンに合うものを探してみてください。なお、登場する人名や会社名はすべて架空です。
- 「不調法ですみませんが、私はお酒を控えておりますので今回はウーロン茶で失礼いたします。」
- 「この度は当社スタッフの不調法が原因で、お客様に多大なご迷惑をおかけしました。あらためてお詫びいたします。」
- 「申し訳ございません。私、芸事にはまったく不調法ですので、カラオケはご遠慮させていただきますね。」
- 「株式会社スフィアの山本様にはお気遣いいただき感謝しておりますが、私は不調法なもので、どうしても飲めなくて…。」
- 「先ほどの取引先訪問では、当方の段取りが不調法でした。次回からは同じミスを繰り返さぬよう十分気をつけます。」
- 「小林部長からお誘いをいただいたものの、私には芸がまったくできないという不調法ぶりがあり、恥ずかしい限りです。」
- 「アルコールの強要は大丈夫ですよ、私自身も不調法ですみませんが飲むとすぐに倒れてしまうもので。」
- 「お客様をお迎えする準備に不調法があり、入り口で迷われてしまったと聞きました。次からは看板を追加いたします。」
- 「誠に勝手ながら、歌は不調法でして、皆さんが盛り上げてくださると助かります。私は応援に徹しますね!」
- 「あいにく私は宴会芸に不調法です。せっかくのお話ですが、申し訳なく思います。」
- 「株式会社フロントの伊藤課長から、またもや接待のお誘いをいただきましたが、どうも私は不調法ですみませんが……。」
- 「彼の発言で不快な思いをなさったかもしれませんが、まだ慣れないもので不調法を許していただけますと幸いです。」
- 「『一曲歌ってください』と言われたのですが、カラオケが不調法で盛り上げる自信がなく、今回は辞退しました。」
- 「私、口下手で不調法な部分が多いので、打ち合わせでも気の利いた返しができずにすみません。」
- 「ご指名いただきありがたいのですが、実は馬場先輩も私も不調法者でして、酒席にはあまり強くないんです。」
- 「せっかくの機会に免じて、もう少しお付き合いしたいのは山々ですが、不調法ですみませんが体調が優れなくて……。」
- 「先日私が準備した資料に誤植があり、『なんとも不調法だな』と部長に叱責されました。今後は気をつけたいと思います。」
- 「あまりに失礼な言動があれば叱るべきですが、まだ新人なので本人の不調法をとがめすぎるのも酷かもしれませんね。」
- 「宴席の隅でずっとスマホばかり見ていたら、不調法だと指摘されてしまいました。今後は周囲にもう少し配慮します。」
- 「本当に申し訳ありません。弊社の田中が大きなミスをしでかしてしまい、不調法をお詫び申し上げます。」
- 「私どものサービスが至らず、せっかくのご期待に背く結果となりましたのは、当方の不調法にほかなりません。」
- 「『新年会で何か披露してほしい』と言われましたが、舞台など不調法ですので、聞き苦しいかもしれません…。」
- 「かしこまった席で失言をしてしまい、取引先から『あれは不調法だ』と後日注意を受けました。今後は気をつけねば。」
- 「社内の懇親会にてギター演奏をリクエストされたものの、楽器はまったく不調法で、人前では無理でしたね。」
- 「田辺さんは落ち着いて見えるけど、実は不調法者らしく、企画会議でちょっとしたミスが多いと聞きます。」
- 「トークに長けた方が多い場では、私の口不調法が目立ってしまい、自己紹介もうまくできずに困りました。」
- 「上司から一発芸をせがまれたものの、『私、不調法ですみませんが本当に芸がなくて…』と平謝りでしたよ。」
- 「大人数が集まるパーティーは華やかですが、人と話すのが口不調法なので、私はちょっと苦手なんです。」
- 「あの人は絵や音楽といった趣味には強いのに、宴席では完全に不調法だからこそ皆から親しまれているようです。」
- 「申し訳ないのですが、今回の会議は私どもの不調法が原因でスムーズに進まず、重ね重ね失礼いたしました。」
「口不調法」とは?
文中でも触れましたが、口不調法(くちぶちょうほう)という言葉も存在します。これは、「口下手」や「うまく話すことができない」という意味で使われる表現です。
- 例:「私は口不調法だから、プレゼンが本当に苦手で…。」「新人で口不調法ゆえ、スムーズに商談できるか不安です。」
「不調法」の中でも、特に会話やコミュニケーションが下手な様子を指す場合には「口不調法」と言い換えると、より適切なニュアンスを伝えられます。
ビジネスパーソンが押さえておきたいポイント
- 自分をへりくだり相手の面子を守る
「不調法ですみませんが…」は、断るときも相手を立てる表現。上から目線で拒否する印象を与えないように活用します。 - 無理に使わない
宴席の空気を読んで、どうしても断れないケースもあります。無理に「不調法だから…」を多用すると、かえって冷淡な印象になるかもしれません。 - 謝罪やお詫びにも使える
単なるお酒の断り文句だけでなく、不備やミスが起きたときの謝罪にも使えるため、表現力の幅が広がります。 - 相手を非難する際には使わない
「不調法」という言葉は、あくまで自分や身内の不備を認めるときに使う丁寧な表現。相手の行為に対して「不調法だ」と言うと、失礼な印象になり逆効果です。
まとめ
「不調法ですみませんが…」という言葉は、場の雰囲気をなるべく壊さずに、上手に断りや謝罪の姿勢を示すことができる便利な表現です。酒席での無理な飲酒や宴会芸を回避したいときはもちろん、自社のスタッフが失敗してしまった際のお詫びにも応用が利きます。
- 主な意味:
- 手際が悪い / 配慮不足
- 酒や芸事に疎い
- 使うと良い場面:
- 宴席での勧誘・強要をやんわり拒む
- 謝罪時に自分や部下の非をへりくだる形で説明する
- 気をつけたい点:
- 相手を非難するニュアンスで使わない
- 必要以上に多用しない
- あくまで丁寧さ・謙遜を忘れずに
ビジネスシーンからプライベートまで、「不調法」を上手に活用できれば、場の空気を読んだ大人の対応がしやすくなります。自分を低姿勢に見せつつ、断りたいことは断るというバランス感覚を習得するためにも、ぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。
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