ビジネスシーンや日常の会話でよく耳にする「お言葉に甘えて」。一見すると、何気ない表現に思えるかもしれませんが、その裏には深い意味が込められています。このフレーズ、実は単なる「受け入れ」の言葉ではなく、相手への感謝や配慮、さらには状況に応じた絶妙なバランスを必要とする言葉です。
「お言葉に甘えて」を使う場面やその意味をしっかり理解することで、あなたの言葉が一層相手に響き、ビジネスや人間関係をより円滑にすることができます。この記事では、この表現の正しい使い方から注意点、さらには類語表現まで、幅広くご紹介していきます。さっそく、「お言葉に甘えて」の本当の意味について深掘りしていきましょう。
「お言葉に甘えて」の意味
「お言葉に甘えて」という言葉の意味を見ていきましょう。
「甘える」の意味には、
「親しくなってお世辞を言うこと」や
「相手の好意や親切をそのまま受け取ること」という意味があります。
相手が提案したことに対して、
遠慮せずそのまま受け入れることや、
相手の親切に素直に従うことを示します。
「少し厚かましいかもしれませんが、せっかくのお申し出なので」
というようなニュアンスに近いでしょう。
「お言葉に甘えて」は目上の人にも使える
「お言葉に甘えて」という表現は、
厳密には敬語ではありませんが、
目上の方や上司にも使える表現です。
「お言葉」の「お」は、
「言葉」に敬意を表す接頭語を付けたもので、
相手に対して敬意を示しています。
「お言葉」の意味とは、「相手から言われた言葉」
ですので、相手が自分に対して何かを言った場合にしか使えません。
「お言葉がある」「お言葉がない」の違いについて考えてみましょう。
お言葉がある場合
上司から「疲れているなら休んでいいよ」と言われたとき。
お言葉がない場合
上司から「疲れているようだけど、大丈夫?」と言われたとき。
どちらもあなたのことを気遣ってくれている言葉ですが、
「休んでいいよ」と言われた場合には「お言葉に甘えて」と返すことができます。
ただし、単に気遣いの言葉だけであれば、「お言葉に甘えて」と返すことは適切ではありません。
「お言葉に甘えて」の使い方
「お言葉に甘えて」という表現は、
相手から「お言葉」があった場合にのみ使用し、
その申し出に感謝し、内容を受け入れる際の返答として用いられます。
使う際のポイントとしては、
「お言葉に甘えて」は、
自分よりも立場が上の方や目上の方、
または対等な立場の人に対して使う言葉です。
何かを提案された場合に
「ありがたく受け入れさせていただきます」という意図で使うことが一般的です。
「お言葉に甘えて」のお勧め文例30選
「お言葉に甘えて」の使い方について、参考になる文例をいくつか挙げておきます。ご活用ください。
- 「お言葉に甘え、遠慮せずにごちそうを頂きます。」
- 「体調が優れないようなので、この仕事は私がやっておきますね。」 —「それでは、松本課長のお言葉に甘えて休ませていただきます。」
- 「先日はご招待のメールありがとうございました。」 —「お言葉に甘えて、今回の出張時にお宅にお邪魔させていただきたいと思います。明後日、業務終了後にご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。」
- 「これ、君にあげるよ。」 —「恐縮ですが、お言葉に甘えていただきます。大切に使わせていただきます。」
- 「来週の会議の資料作成について、佐藤さんのお言葉に甘えてお願いしてもよろしいでしょうか。」
- 「お言葉に甘え、資料の提出期限を延ばさせていただきます。」
- 「先日は、お言葉に甘えて長居してしまい、失礼しました。」
- 「これから銀行に行くので、一緒に手続きをしますか?」 —「よろしければ、お言葉に甘えて一緒にお願いします。」
- 「体調が優れないため、お言葉に甘え、今日は早めに帰らせていただきます。ご迷惑をおかけしてすみません。」
- 「○○社からのクレーム対応に関して、お言葉に甘えて吉田先輩に同行していただければと思います。ありがとうございます。」
- 「ご招待いただきありがとうございます。せっかくのお誘いなので、お言葉に甘え、喜んで参加させていただきます。」
- 「佐藤課長がおっしゃるなら、お言葉に甘えてお受けします。」
- 「差し入れを買ってきたので、皆でどうぞ。」 —「ありがとうございます。お言葉に甘えて、皆で頂きます。」
- 「お言葉に甘え、先に失礼させていただきます。」
- 「退職される鈴木さんが万年筆を譲ってくださるとのこと、お言葉に甘えていただきます。長い間お疲れ様でした。」
- 「お言葉に甘え、ご馳走になってしまいました。」
- 「お言葉に甘え、喜んで参加させていただきます。」
- 「夕食まで用意していただき、ありがとうございます。お言葉に甘えて、いただきます。」
- 「申し訳ないと思いつつ、田中様のお言葉に甘えてしまいました。」
- 「お言葉に甘え、資料をお借りいたします。」
- 「お言葉に甘え、今回は譲らせていただきます。」
- 「税理士会でのプレゼンに関して、お言葉に甘え、加藤先輩のご助力をお願いしたいと思います。」
- 「事務所移転にあたり、貴社のトラックをお借りできるとのこと、お言葉に甘えてありがたくお受けいたします。」
- 「お言葉に甘え、先に失礼させていただきます。」
- 「これから銀行に行くので、一緒に手続きをしますか?」 —「お言葉に甘えて一緒に行きます。」
- 「お言葉に甘え、今度の会議に参加させていただきます。」
- 「お言葉に甘え、遠慮せずに頂きます。」
- 「この度は素晴らしいお品をいただき、誠にありがとうございました。お言葉に甘えて、ありがたく頂戴いたします。」
- 「お言葉に甘え、次回の商談をお願いしたいと思います。」
- 「お言葉に甘え、資料作成をお願いしたいのですが、可能でしょうか?」
「お言葉に甘えて」メールでの使い方
メールでも「お言葉に甘えて」は非常に役立つ表現です。
会話と同様に、相手から「お言葉」があった場合に、
その返答として「お言葉に甘えて」を使うことができます。
文書で使う場合は、さらに感謝の気持ちを加えると、
より丁寧で心がこもった印象を与えることができます。
文章では感情を伝えるのが難しいため、
そっけなくならないよう、丁寧な表現を心がけましょう。
以下にいくつかの例を挙げておきます。
・「この度は素晴らしいお品をいただき、誠にありがとうございました。お言葉に甘えて、ありがたく頂戴いたします。」
・「先日、貴社にお伺いした際には、お言葉に甘え、長時間お付き合い頂きましたこと、心より感謝申し上げます。」
・「先日は、石井社長のお言葉に甘え、貴社の新築完成見学会にお招きいただきありがとうございました。非常に参考になり、学びの多いひとときでした。心より感謝申し上げます。」
「お言葉に甘えて」の類語表現
「お言葉に甘えて」の意味や使い方が分かったところで、
その類語表現も確認しておきましょう。
類語を理解することで、さらに使いこなせるようになります。
ご厚意に甘えて
「厚意」とは、相手の「思いやりや優しさ」を意味します。
「ご厚意に甘えて」という表現は、相手の「思いやりのある心」に甘えているという意味になります。
これは「お言葉に甘えて」とほぼ同じニュアンスで使えます。
ご親切に甘えて
「親切に甘えて」とは、相手の「深い思いやり」や「温かい配慮」に甘えることを指します。
「お言葉に甘えて」と同じように使える表現です。
遠慮なく
「お言葉に甘えて」は、相手の行為に遠慮せずに受け入れる意味を持ちます。
「遠慮なく」は、このニュアンスをよりカジュアルに表現した言葉です。
ただし、敬語表現が含まれていないため、使う際には注意が必要です。
「お言葉に甘えて」のNG例
以下のような使い方は、適切ではありません。
- 「お言葉に甘えて、今回は譲らせていただきます。」
- 「お言葉に甘えてもよろしいですか? それでは、○○もお願いしてもいいでしょうか?」
- 「お言葉に甘えさせていただきますが、おかげさまでした。」
- 「お言葉に甘えて、一人でやり通してみます。」
- 「お言葉に甘え、どうかご協力をお願いできませんか?」
- 「お言葉に甘えて、今回は目をつぶっていただけませんか?」
- 「お言葉に甘え、残念ながら都合がつきません…」
このような表現は注意が必要です。
「お言葉に甘えて」とは、相手の提案に感謝して素直に受け入れる意味ですが、
場合によっては甘えすぎると、相手に失礼と受け取られることがあります。
あまりに図々しく感じられると、「この人は遠慮しないな」と思われてしまうこともあるため、注意が必要です。
「お言葉に甘えて」を使う際、重要なのは、相手が本当にその申し出を心からしているかどうかを見極めることです。
相手が社交辞令で言っているだけの場合もあるので、相手の真意を確認することが大切です。
その場の空気や相手の様子をしっかりと読み、
無理に甘えすぎないようにしましょう。
また、時には遠慮の姿勢を見せることも重要です。
「お言葉に甘えて」を使う際、最初は遠慮する姿勢を示すことで、相手の本音を知ることができます。
もし遠慮して断った後、相手が再度「本当に頼ってもいいんだよ」と言ってくれた場合、
その時点で「お言葉に甘えて、お言葉に従います」と伝えるのが適切です。
逆に、何も言ってこなかった場合は、社交辞令であった可能性が高いため、
「遠慮しておいて良かった」と考える方が無難です。
まとめ:「お言葉に甘えて」営業マンが適切に使うために
これまでお伝えしてきたように、「お言葉に甘えて」は、
相手からの好意的な提案やお誘いを受け入れる際に使う表現です。
ビジネスシーンでは、相手の親切を受け入れる場面で
とても便利なフレーズとなります。
ただし、先に触れたように、
相手の言葉が心からのものなのか、
本当に甘えても良い場面なのかは、
自分自身で判断しなければなりません。
少し難しいかもしれませんが、
何が適切で、何が不適切なのかをよく考え、
そのうえで「お言葉に甘えて」を使いましょう。
注意すべきは、相手に「図々しい」と思われないようにすることです。
そして、「お言葉に甘えて」を使う際の重要なポイントは、
感謝の気持ちをきちんと伝えることです。
どんな言葉でもそうですが、
同じ言葉を使っても、心がこもっていなければ相手には伝わりません。
相手の厚意を受け入れるのですから、
最大限の感謝を込めて「お言葉に甘えて」を使いましょう。
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